【発見されたビール瓶に入った酒】洞窟に眠った出品用の酒
昭和48年、当時の社長が洞窟の隅に大事に保管していた酒が約20本。
なんとビール瓶に詰まっているという、珍しい酒が見つかった。
現社長の島崎によると、
「その時代には近隣の蔵元たちも、鑑評会に出品する最高の酒を、当時は家によくあったビール瓶に詰め、自分たちの特別な時に飲むように取っておいた」という事らしい。
父親からその話を聞いた島崎が広い洞窟内を探したところ、「東力士」の王冠を打たれたビール瓶が、ビール用のP箱(配達用のケース)に3箱ほど、隅にあった。
これは貴重な面白い酒だ、という事で早速味を確かめてみると、50年近く洞窟に眠った最上の酒は、熟成が進み他に絶対味わえない奥深い驚きの味わいであった。
そんな物語を私、上野は雑談の中で聞き大変興味を持ち、是非味わわせて欲しいと島崎に頼んだのだ。
快くその貴重な酒を飲む機会をいただき、澱を濾して(古いワインのように多くの澱が溜まっていた)味わってみた。

テイスティングコメント
「コルク栓を使用した長き眠りから覚めるそのイメージは、オールドウィスキーにも似た甘く豊かな旨みと期待してテイスティング。
まず香り。優しい優美なアプローチながら確実にアミノ酸を予感する奥ゆかしさ。さあ、これから大変なことが起こりそうな期待感に溢れる。
そして一口含むと、舌の上に複雑な甘みが躍動した。それは砂糖のような甘さとは異なり、シルクのような滑らかさと直接的でない旨みに圧倒される感覚。
専用甕の遠赤外線効果が働き丸みを帯びた柔らかさが、独特なベルベットを想像させられた。
その後に訪れる素晴らしい体験、大吟醸常温熟成の特有なドライアプリコットに似たもどり香。
フィニッシュに程よい心地の渋みと刺激、これが私の口中に幸福感をもたらした。」上野伸弘

何より「洞窟熟成」という極めて稀な日本酒蔵であること、このオリジナリティを生かす熟成酒が毎年生まれ続けていること。その先に価値ある日本酒の未来像を、蔵元が信念を持って取り組んでいることが素晴らしい。近年に熟成の日本酒が注目されてきて、ようやく東力士の本領発揮、多くの人々に楽しんでもらう機会が増えるであろう。 独特な熟成方法を持つ酒は、旨味甘味のある酒が低温でも常温でもない貯蔵により、この個性ある蔵だけの旨さを生んでいる。
「東力士 大吟醸洞窟秘蔵酒 昭和48年醸造 633ml」について
原材料名 |
米・米麹・醸造アルコール |
原料米 |
国産山田錦 |
精米歩合 |
40% |
アルコール度数 |
17~18% |
ブレンド
及び保存環境 |
なし
大吟醸
洞窟内熟成 |
容量 |
633㎖ |
ヴィンテージ |
1973年 |
残存本数 |
およそ20本 |
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「蔵元」について